こざかなの素

健康は大事

「その日」が来た(3)

(以下、人によっては不愉快に感じたり、気分が悪くなると思われる表現がありますことを明記しておきます)

 

明け方近く、階下から兄と私を呼ぶ母の声が聞こえました。おおかた、父がまた何やら粗相でもしたのだろう、との予想は当たらずとも遠からず。
トイレで母が見つけたのは、こと切れていた父でした。

寝ぼけ眼で冷たい床に横たわっている老人を見ても、私には何の感情も湧かず、むしろ「何でわざわざこの日に逝くのか」と呆れた気持ちになりました。どこまで人に迷惑を掛けるのか、と。
(午後から確定申告に行く予定だった)

関わりたくない家族でも「関わらざるを得ない」日が来てしまったのです。

 

すでに脈が触れない状態でしたが、兄が119に連絡したため隊員の方たちが来てくれました。
しかし、ほどなく警察案件となり、現場検証・事情聴取・検視が行われました。
自宅で亡くなると何だか面倒らしい、ということは知識として知っていましたが、こんなに細かく調べられるとは思っていませんでした。事件性があるかないかを確認するためなので仕方ありませんが、起きたままの自室を見られてちょっと恥ずかしかった……

某アニメ(漫画)で小さな探偵さんがよく事件現場に入り込んで怒られていますが、母も部屋に荷物を取りに行こうとしたら間髪入れずに阻止されました。

実は母が発見した時、仏さんはまだトイレ内にあったのですが、母自身がトイレに行きたかったこともあり、やむを得ず廊下に移動させたのです。
ところがトイレのドアを全開で移動したため、今度は仏さんの足が邪魔で扉が閉められない状態になり、母だけでなく、兄も私もトイレのドアを開けっ放しで用を足すという情けない事態になってしまいました。
証拠隠滅を疑われるため、どんなに無残な姿で亡くなろうと動かしてはいけないのですが、物理的な理由でそれは無理でした(もっと簡単に言うと邪魔だった)。

本人の所持品の確認、それらをテーブルに並べて写真を撮ったり、倒れていた状態(頭や身体の向き・着衣の様子など)を細かく説明するなど、全ての作業が終わるまで4~5時間くらいかかりました。

警察の方々が引き揚げてから数時間後。ここから滅茶苦茶忙しくなりました。
葬儀社に連絡して遺体の搬送と安置をお願いしましたが、検視(検死)を行った医師から検案書を発行してもらわないと引き取れないとのこと(検視後すぐには発行されなかった)。
死因がコロナウイルスだった場合は、通常とは準備が異なるとのこと。
担当医師の病院に問い合わせると、まだ警察から連絡が来ていないので書類は作れない、との返答。
その旨警察に問い合わせると「すぐに作成して病院にFAXします、終わったら折り返し連絡しますので」と対応してもらえました。
「そうだよね、警察も忙しいよね」と思いつつ連絡を頂いた後に再び病院に電話してから大急ぎで向かいました。
検案書を受け取ったその足で役所に行き、コピーを多めに取ってから窓口に書類を提出。1時間ほど待ってから火葬許可証を受け取り、その場で葬儀社に連絡(死因判明したので)。
夕方、担当の方が自宅に訪れ、白い布に包まれた仏さんは火葬場の安置室に運ばれていきました。

冒頭に書いた通り、私には悲しいという感情が湧かず、終始冷静に事務処理を進めました。
そして今後の煩雑な手続きは、ほとんど私一人にのしかかってくることになります。

(続く)