こざかなの素

健康は大事

【お題】タイムトラベル小説の金字塔

今週のお題「SFといえば」

本を手に取って活字を目で追うという作業からは、ここ数年遠ざかっていました。その理由は、読書にあてていた通勤時間がなくなったことが一番ですが、老眼が進んでしまったというのも理由のひとつです(笑)。

SFというカテゴリー自体も、それほど多く読んではいませんでしたが、数少ない既読SF作品の中では、広瀬正さんの『マイナス・ゼロ』が読後何年経っても忘れられないほど強く印象に残っています。

タイムマシンを扱った王道SFで、舞台は昭和20年、戦時中の東京から始まります。
主人公は当時中学2年生だった少年で、空襲の混乱の中、隣人の男性から死の間際に奇妙な遺言を受け取ります。
大学の先生であり、自宅にドーム状の研究室を持つその男性には、少年より3つ年上の娘が一人います。子ども扱いされることに不満を抱きつつも、少年にとって彼女はちょっと気になる存在のようでした。

空襲警報のサイレンが鳴り、焼夷弾の火の粉が降る中、娘は防空壕代わりのドームで難を逃れますが、その建物はやがて煙に包まれ……。

そして18年後、少年は大人になり、先生との約束を果たすためにある場所を訪れます。

……と、これ以上書くとネタバレになってしまうので控えますが、初めての読後から思っていることは

この世界を映像で見てみたい!

実写化するとキャストうんぬんでイメージが崩れる不安はありますが、ここまですごいSF作品がなぜ今まで映像化されていないのか不思議です。

冒頭から既に伏線の嵐で、タイムトラベルものによくある「過去や未来の自分と対面してしまう」という問題も、この作品ではとても自然な形でクリアしています。冷静に考えるとあり得ないことですが、終盤は「環」が繋がっていくような展開ですっきりと終わっています。
実は「本人同士の対面」以外にも不思議なからくりが登場します。
「あの人があの人で、あの子があの子……?」

文庫は結構厚みがありますが、一度読み終えたら、恐らく再読したくなる作品です。
1982年に集英社文庫で出版されたのちに、2008年に活字が大きくなった改訂版が出ています。

新旧比較。旧版は消費税3%時代に購入しました。

 

もう2作品、海外ものとマンガをさらっと挙げていきます。

『リプレイ』(Replay) 著:ケン・グリムウッド

wikiを見た限りですが、こちらの作品は日本でマンガ化・テレビドラマ化・ラジオドラマ化されているようです。

人生を、やり直せたら。突然の発作で時間を遡った男は……? 人生で一度は読みたい名作。世界幻想文学大賞受賞。

ニューヨークの小さなラジオ局で、ニュース・ディレクターをしているジェフは、43歳の秋に死亡した。気がつくと学生寮にいて、どうやら18歳に逆戻りしたらしい。記憶と知識は元のまま、身体は25年前のもの。株も競馬も思いのまま、彼は大金持に。が、再び同日同時刻に死亡。気がつくと、また――。人生をもう一度やり直せたら、という窮極の夢を実現した男の、意外な、意外な人生。

引用元:ケン・グリムウッド、杉山高之/訳 『リプレイ』 | 新潮社 

死んでは生き返るを繰り返す、人生の強制やり直し物語(SFです)。

 

童夢』 著:大友克洋

大友さんの代表作といえば『AKIRA』の方が有名ですが、個人的には『童夢』が最高傑作だと思っています。
少女と老人の超能力合戦の話(と書くとものすごく軽い印象だな…)。
静かなラストシーンに鳥肌が立ちます。
大友さんに影響を受けたマンガ家も多いようで、江口寿史さんの『ストップ!!ひばりくん』にも、チョウさんの「ズン」がパロディで描かれていますね。

以前のお題で晒した本棚にも収まっています。

 

現在は全集などで装丁が変わってしまいましたが、やはりオリジナルの方がいいなぁ。

 

天と小口の変色も年月の経過を感じます。

 

初版。当時のヤンマガでは『AKIRA』が連載中でした。

 

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